どこで聞いたか定かではないが、どんな料理上手でも子供を前にしたらチョコとアイスには勝てない、という。これが食べ盛りになると必ずしも当てはまらないだろうが、チョコレートの中毒性は多くの人が認めるのではないだろうか。
これまで庶民的なのから高級品まで幾度となくチョコレートを口にしてきた。世界でも最高峰と言われるベルギー製などは香りが良くて、素晴らしい口溶けだった。そのベルギーの世界的チョコレートメーカーGodivaのブランド名については伝説や謎があるようだ。
パッケージにある馬に乗った髪の長い裸の女性は、英国イングランド中部コヴェントリーの修道院に残る伝説によるもの。Godiva夫人は11世紀に実在した人だが、夫のレオフリック伯爵が領民に重税を課したことに抗議、素っ裸で馬に乗り町を一巡したという。伝説は語り継がれ、コヴェントリー市の旗は彼女のシルエットが描かれ銅像も立っている。しかし魅惑的なモチーフではありながら研究者間では史実でないことで一致しているという。
領主「すっぽんぽんで町内一巡りしてきたら考えたるで。やれるもんならやってみぃ!」
伯爵夫人「ほなやったるわ!ウチとの約束破ったら百姓一揆が起きるで。忘れなや!」
村の老人「伯爵夫人が一肌脱いで増税に反対してくださるのじゃ、ワシらはお姿を見たらいかん。お前目をつぶれ、バチが当たるぞ」
村の若者「爺様こそ目が開いてるよ」
盗み見した男が盲目になったとか、面白い話にどんどんホラ話が加わっていくのだが、作り話の中にも真実はある。
当時ウスターという町で英国王ハーダクナットが派遣した徴税人2人が、重税で怒り狂った村人に殺害される事件が起きた。レオフリック伯爵はその報復の命を受けたが、ウスターの領民の反発が激しく、それを鎮圧するために地元の聖堂に多額の寄付を施しベネディクト派の修道院を設立したという記録が残っているという。おそらくは教会関係者が為政者からの献金を後世に書き記す時、民衆が税金をおとなしく納めるように美談を書き加えたのだ。
同時期というと日本は平安末期から鎌倉時代、寺院が施餓鬼を行ったように教会が炊き出しをして食べ物を振る舞ったりしたのかもしれない。いつの世も僅かなバラマキで怒りの矛を収めねばならないのかと思うと切ないし、信仰も貧しい人も利用されるしかないのだろうか。今でもLady Godivaにちなんで裸…に見える肌色の全身スーツを着て馬に乗って増税反対パレードをやる人があるとWikipediaは書いているけれど、伝説なだけにどこか滑稽でほろ苦い。