2020年1月29日水曜日

針金触ったら

玄関扉の脇に針金が出ていました。番線くらいの太さのものでいつ飛び出たのかとよく見ますと枝のようでもあり。

ちょんと触ると....柔らかい(苦笑)

蛾か何かの幼虫さんでした。



何の幼虫さんか探すときのために欲しい「イモムシ ハンドブック」。
これはなかなか便利で、以前梅の木にリンゴコブガの幼虫がついて仰天したときもすぐ見つかりました。
この子は脱皮した頭部の皮を順番に頭にくっつけていく習性があって、歴代のヘルメットが小さいのから大きいのまで乗っかっているという奇妙キテレツな奴です。

写真がカラフルで可愛いこともあってかシリーズ3まで発行されています。

気に入ったのは目次にイモムシが電車の図鑑みたいに、ずらっと横向きに並んでいるところ。スズメガとか本当に代わった色や姿をしているので、虫めづる姫君の仲間入りsましょう。


2020年1月28日火曜日

不老の秘薬

陳舜臣『秘本三国志』実はまだ最後まで読めていません。そろそろ赤壁の戦いに向けて曹丕が水軍の訓練を云々という辺りなので、ゆっくり楽しみながら読みたいと思います。

好きな登場人物は、と聞かれたら曹操は別格として呉の周瑜なんかいいですね。
諸葛亮に負けじとひたすら努力するけど、報われなくて怒りのあまり血イ吐いて死んじゃう。戦いに明け暮れる男たちの性格もそれぞれ、吉川三国志で登場する人数は実に839人、自分に似ている人物もみつけられるかもしれませんね。

『秘本三国志』は秘本とするだけあってフィクションも多く「桃園の誓い」とか「美女連環の計」とかいわゆるおなじみのエピソードはあまり描かれません。

代わって架空の人物が中心となってストーリー展開しているのが特徴です。

なかでも漢中に勢力を張った宗教「五斗米道」の教祖である張魯の母、小容という女性が物語のキーパーソンで、諸葛亮を早くから見出し「天下三分の計」を語らうといった設定。秘薬を使って40歳を超えても若々しく、人を虜にする魅力に溢れた女性なのです。群雄割拠の時代をどう治めるか、常に太極を見て動くが自分に残された美しさを保てる時間は幾ばくもない。

作品には何人も魅力的な美女が登場し、様々な地で能力を発揮して時に妖艶、時に清楚。陳先生の描く女性はクオリティーが高くて憧れます。


2020年1月27日月曜日

三国志、若葉マーク。

昨年いきなりリビングのテレビが映らなくなって買い替えを余儀なくされました。
せっかく新しくなったテレビでなにか観てやろうと思い、ふと思い立って選んだのがこれ。三国志 Three Kingdoms 

曹操の董卓暗殺未遂から諸葛亮・司馬懿の対決まで40分くらいのドラマを全95話まで、つまらないメロドラマのところを飛ばしつつ一気に観てしまいました。中国のドラマなので曹操をひいきにした展開。R指定なしに安心してお子様から楽しめる内容です。

初めての三国志。2018年、河南省で2009年に発掘された墓が曹操のものと認定されたそうです。卑弥呼の時代とかぶるんです。魏志倭人伝ですよ。何でも大分県の古墳から出土した鏡が曹操墓の鏡とそっくりなんですって。そんな関係でちょっとした三国志ブームが起きてるみたいです。

ずっと気になってたんです。三国志の登場人物の名前をスラスラいえる奴とか同級生にいたりしませんか?あんなにややこしいのによくも覚えられるものです。そこでこんな本『三国志ナビ』(渡邉義浩 新潮文庫)を手元に置いたら、別に検索しもってドラマ観たらええやん🎵となりました。

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ナビを読んでいると吉川英治の三国志が、だいぶ日本人向けに味付けされていることが分かりました。劉備の母(架空の人物)が、お前は漢の末裔ということを忘れたか!と言って怒ったり、董卓と呂布が奪い合いした「美女連環の計」で登場する貂蝉が不貞を理由に自殺するとか。

三国志演義では英雄でも、一番性格が悪いのは劉備と決め込んでいるので、次に選んだのはこれ。『秘本三国志』陳舜臣です。こっちはR指定ですぞ。(つづく)

2020年1月25日土曜日

君主たるもの

今日の漫画は「チェーザレ 破壊の創造者」惣領冬実(モーニング不定期連載中 1-12巻)です。

チェーザレ=ボルジアはイタリアルネサンス期の軍人・政治家で、レオナルド・ダ・ヴィンチが惹かれ、マキャべッリが著書『君主論』の中で、冷酷非道ながら「君主の理想」として紹介した人物。

イタリア史に詳しい方は『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』塩野七生 などでお読みになっているかと思います。が、日本の研究者は少なく翻訳された本も少ないのだそうで。

漫画の「チェーザレ」では監修にダンテ学者の原基晶を迎え、本邦未訳のG・サチェルドーテ版の伝記を翻訳しながら描いているというから、気合の入りようが段違い。ただ単行本が4年待ちとかなのはもどかしいです。その間に少しくらい勉強しとけってことですかね。

ピサの学堂にフランス、スペイン、イタリアの貴族の子弟が集まって共に学び、戦争さながらの十字軍を模した「騎馬試合」、教皇選挙コンクラーベの様子、ミケランジェロがシスティーナ大聖堂の天井画を描く前の天井画の復元を試みる(星空の絵)など、時代考証にも手を抜きません。

絵は少女漫画系なんですがほとんど恋愛なし、辛口のストーリー展開。西洋史にあまり詳しくなくても、ビッグネームな有名人が登場して飽きないしルネサンス期から大航海時代へつながる頃の躍動感は伝わってきます。次号、期待してます。

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2020年1月24日金曜日

自分を知る

今日の本はこれ
「アスピーガールの心と体を守る性のルール」デビ・ブラウン著

もはやアラフィフとなったオバさんの読む本ではないけれど、思春期の息子をもつ母としてこういう女の子がいることも知って欲しいなと思います。とはいっても息子は読まないだろうし、きちんと伝わるかも怪しいものですが。

内容紹介
実は危険にさられている発達障害の女の子…
特にアスペルガーの女の子は、性知識が乏しく、
コミュニケーションも苦手。
無意識のうちに危険にさらされることも少なくありません。
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自分がどうしても好きになれない…
どうして、会ったばかりの人とセックスしちゃだめなの?
どうして、私は人の誘いを断れないの?
できれば彼氏にしない方がいい人って、どんな人?
避妊ってそんなに大切なの?
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当事者としてこういう本が出てくれたことに感謝すると共に、日本の心理学や医療関係の人がもっと性の問題について語ってくれていたらなって、ちょっぴり青春時代を後悔しています。

自分がアスペルガー症候群なのかADHD傾向があるのかは知りませんし、必要性がないので調べる気にもならないのですが、対人関係での困った!は特に男女関係で顕著に現れました。人の心が読み取れないのでじっと見つめてしまったり、頼まれたら何でもしてあげたいと思ってしまったり。時に不誠実、時に自分勝手、真意がわからないと言われ傷つくこともしばしば。

性別不詳な安定感が今の私には心の平安とも言えます。



2020年1月23日木曜日

へうげもの讃

漫画が好きだ。なんでも良いわけではないが表現が自由で、映像よりも言葉があるだけに印象に残りやすい。良質な漫画は何度も読み返したくなるし、そのエッセンスは引き継がれていくから少々荒削りでも世に出すべきだと思う。

今日ご紹介するのは、山田 芳裕 「へうげもの」(講談社「モーニング」連載2005〜2017)。
古田 重然(茶人としては古田織部の名で知られる)の半生を家康暗殺の嫌疑で切腹するまでギャグ満載で描く。
茶道が形成されていく時代の躍動感、茶の湯コーディネーターとしてのエキセントリックな性格が大袈裟な表現ながら引きこまれていく。

一話一話、タイトルに懐かしのヒット曲やロックナンバーがパロディとして使われており、これも一種の「本歌取り」の妙がある。
第一話 君は"物”のために死ねるか!? (君は人のために死ねるか/杉良太郎 1980)
第二話 黒く塗れ!(Paint it Black/ The Rolling Stones 1966
第三話 碗LOVE (One Love/Bob Marley 1979)
といった具合にアラフィフ以上の読者の心をわしづかみする。

第一話は信長の命で松永弾正久秀に名器「平蜘蛛」の茶釜を渡せば裏切りを許すから投降するよう説得に行く話。史実ではないらしいが信貴山城で爆死するシーンの必死な笑いは漫画ならではの表現と思う。

今年の大河ドラマ「麒麟が来る」で登場した吉田鋼太郎演じる松永弾正も大いに漫画っぽくアニメに親しんだ若い人受けしそうだ。ゲームの影響もあって戦国のちょい悪オヤジの人気も上がっているようで、安土城のヒントになったくらい派手だったという多聞城趾なんかも訪れて歴史に思いを馳せてみて欲しい。

生か死か。武か数寄か。それが問題だ!!



2020年1月21日火曜日

伊勢海老のエビフライ

今日の映画は「南極料理人」2009年製作/125分/日本
配給:東京テアトルです。
南極観測隊員の西村淳のエッセイを映画化したもので、家族と離れて1年半の厳しくて笑える観測所の日々を描きます。インターネットもない時代、とてつもなく料金の高い国際電話でも隊員にとっては家族や恋人と話せるのが楽しみで楽しみで涙がこぼれます。

料理担当の西村君は毎日あれこれ工夫して食事をつくるのですが、みんなのストレスがピークに達すると我が儘放題、めちゃくちゃな注文をされたりして。堺雅人の困ったような笑顔がとてもいい味を出しています。伊勢海老が食糧庫から出てきたとき、どんな料理にして出そうかと考えていたら皆口々に言うには「エビフライだな」「そりゃエビフライだろ」。それをきちっと作ってあげるんですね。巨大なエビフライを一人一個ずつ。

鬱で気がおかしくなってバターをかじる人とか、高地で気圧が低いのにインスタントラーメンを湯がいて麺がまずいと泣いたり、裸で外に出たり、って極地ですよ。
あぁ、ご苦労様...


2020年1月20日月曜日

啐啄同時

禅宗に「啐啄同時」という言葉があるそうです。
「逸することのできない好機。また、熟した機をとらえ悟りに導くこと」の意味で、師と修行者が機を得て気持ちの相応ずることをいう。(漢検四字熟語辞典より)

「啐」はひな鳥が卵からかえるとき殻の中でつつく声、「啄」は母鳥が外からつつくことをいうそうで。タイミングよく呼応する様子がなんとも愛らしいと思いませんか。

ずいぶん後になって「あの人が言ってたのはそういうことだったのか」と理解する学びが多い中で、「啐啄同時」が実現できるのは天才同士のきらめくような瞬間なのかなぁと憧れてみたりします。

そこまでいかなくても気の合う二人で「そうだよね!」って共感できることは幸せなことですね。



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漢字検定

一時期、漢検(日本漢字能力検定)に凝っていて、準1級は二度目のチャレンジで合格できました。使ったテキストが良かったのでしょうね、出題傾向対策に出てきた問題が多く出たので運良くギリギリ合格点に達したようです。準1級の問題には明治期の文豪の作品を読むのに必要な漢字が多く含まれるので、知っていると日本文学が少しだけ身近になります。

しかしやらなくなるとまたすぐ忘れてしまうもので、私などは二年も経つともう2級レベルも厳しくなってきました。中には満点合格まで受け続けるという人もいるそうですよ。

その上の1級はというともう、それはそれはレベルが高くて「罵詈讒謗」だの「霹靂閃電」なんかをさらりと書いたりちょっとした漢籍の知識も要求されるんですね。1級合格者はそれこそ合格しても点数を上げるために何度も受験して完璧を目指すんだそうで...

1級・準1級に合格すると割安で「漢字教育士養成講座」のオンライン講座を受けることができるという特典があります。講座を受けるに至って作文のスクリーニングがあって、A4一枚にびっしりカクカクしかじかの理由で漢字教育に携わりたいみたいなことを書きました。よくもまぁここまで盛ったなという内容でしたが...

内容については「漢字の成り立ち」や「白川静漢字学」は面白かったのですが「中国語音韻学」に至ってはどうにも興味がわかなくて小テストが何度受けても合格できず、そんなこんなで期日の1年いっぱい使ってようやくクリアしましたが、いい加減な勉強なので身にはつきませんでした。

漢字の知識は割と万人受けするらしく、子供の放課後教室とかで漢字講座をやってるとか、あれこれゲームやクイズを考えて高齢者向けイベントにしているとか積極的な方も多くいらっしゃるようです。とてもそのレベルには達していませんが、ここでは覚書として面白かったことを紹介できればと思っています。(つづく)
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2020年1月19日日曜日

大根葉

大根葉が好きです。
昨日イベントで月ヶ瀬から売りに来る野菜に、間引き菜があったので厚揚げと炊きました。柔らかいのでさっと煮るだけでおかずになります。

大根の上のかたい葉っぱでも、湯がいて細かく刻んで油で炒め、濃いめの出汁としょうゆ、みりん、酒でパラパラになるまで炒るとふりかけみたいになります。かつお節やすりゴマを加えてもいいです。ご飯が進み過ぎて困りますね(笑)

昔おばあちゃんがフキの葉っぱで作っていました。こちらはちょっとほろ苦く大人味なので好みがあるかもしれません。

2020年1月17日金曜日

パン焼いてみた

雨が降ってきて出かける用事もキャンセルになって、久しぶりにパンを焼いてみました。
アラフィフ主婦らしいっしょ。

強力粉250g
薄力粉少々
バター15g
塩 小さじ1/2
砂糖 大さじ1
ドライイースト6g
牛乳 200ml
黒豆の甘煮

材料をホームベーカリー(10年以上もの!)に入れて生地を作り1次発酵
もらって一年以上経ってる黒豆の瓶詰めの水を切って生地に混ぜ込む。
結構つぶれちゃうけどあんまり気にしない。
二等分してしばらく休ませる 霧吹きしてラップで包んでおく
オーブンで2次発酵 40℃で20〜30分で膨らんでくる
成型も適当なまこ型
温度を250℃に上げてしっかり目に焼く。
底の方が生っぽかったらオーブントースターで下火だけにしてカリッと
ブサイクだけど家庭的




君が袖振る

額田王は大海人との間に一女をもうけた後、天智天皇に嫁ぎ、壬申の乱の後再び後宮に戻されたとのことであるが、悲恋のヒロインである見方は実は薄い。井上靖の小説の影響もあるだろうが、妻としてより巫女としてのパワーを買われての採用というのが有力だ。
そのへんを下敷きに

額田の
「あかねさす紫草(むらさき)野行き標野(しめの)行き 野守は見ずや君が袖振る」

大海人
「紫草のにほへる妹(いも)を憎くあらば 人妻故に我恋ひめやも」

のシチュエーションを思えば大陸的ドライ感満載である。

大海人「おーい、元気にしてる?愛してるよぉ!」
額田 「そんな大きな声で、何いうてんねん。うちもう行くわ」
大海人「おらんようになったら急に寂しなってん。相変わらずきれいや。好きやで!」


気候と人の考え方

日本史といえば応仁の乱から安土桃山時代、中国史といえば三国志というくらい、群雄割拠の時代は現代社会に擬えやすいこともあって人を魅了してやまない。

最近は気候変動で歴史を紐解こうという試みもあって、日本の戦国時代は乾燥して日照りが多かったとか、三国志の頃は温暖化の反対で寒冷化が進んで南下せざるを得なかったとか当時の記録と考古学的な調査で少しづつ明らかになってきている。
「三国志」の動乱は実は寒冷化の産物だった気候変動や遊牧民との関係で読み解く中国史

人の考え方も気候や風土によって変化するとの見方もあって興味深い。
記紀万葉の頃は大陸的、平安中期以降は国風文化と言われるが文学的に流行したものだけ残されていると言って良いのではないか。

万葉集は貴族階級だけでなく様々な立場の人の歌が集められているので文学的にも考古学的にも研究材料として注目されつづけている。一般的に為政者の歌は傲慢であっけらかんとしていてドライなイメージがあり、中間管理職の歌はほろ苦く、労働者階級は故郷の家族や生活苦を歌う。

万葉きっての女流歌人といえば額田王であるが女帝斉明天皇の代歌として詠んだ
「熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば 潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」
(難波津を出発し伊予の港で停泊していた船団の士気を上げるための歌)が代表格。

百済の王子奪還?えー?なんで同盟国にここまでしてやらなあかんの??みたいな雰囲気もあったんじゃないかと思う。「さぁ、参りましょう!」なんてパワフルな歌も虚しく、まもなく筑紫で斉明天皇は崩御し、代わって政権を継いだ天智天皇による白村江の戦いではボロボロに。半島から亡命してきた渡来人の扱いをめぐって天智天皇VS大海人皇子の争いに発展していく。



2020年1月14日火曜日

空っぽの器

今回はちょっとシリアスに
三度目の殺人』(2017年 監督:是枝裕和 主演:福山雅治 役所広司)
をとりあげます。ネタバレ注意。

是枝作品は『そして父になる(2013年 出演:福山雅治 リリーフランキー 尾野真千子 真木よう子)『万引き家族』をご覧になった方が多いと思う。

家族を取り上げることの多い監督作品の中で、かなり救いがなく後味のすっきりしない仕上がりだ。役所演じる殺人の容疑者である三隅という男、過去にも殺人の前科がある。証拠も揃っていて死刑は免れないが、動機がはっきりしない。先の事件で取り調べに当たった刑事は三隅のことを「空っぽの器」と表現する。親しくなった相手の心を読み取りその人の意思で行動する、具体的には代理殺人という意味合いらしい。

相手の気持ちが分かるというのは思いやりのひとつだろうが、この場合共感ではなく心の「乗り移り」ならぬ「取り込み」だ。

相手の求める人物像を無意識で演じてしまうのもまた、罪なのかなぁと思う。

紙の辞書がお好きでしょ?

辞書といえば国語辞典でも英和辞典でも紙のものを古いままいつまでも持っている。第何版とか新しいものが出ればその都度買い換えた方が良いのだが、日々手にしていたものを手放すにはあまりに愛おしく棚に納まっている。

とは申せひとたび電子辞書を知ってしまったら、その軽さ検索の速さ・更新の便利さ・音声まで何もかもスマートで紙辞書からはますます遠ざかるし、パソコンだとオンライン辞書で十分なのだが。

以前PTA役員で卒業記念品を決める役が回ってきた。従来は1500円ほどの予算で廉価版の国語辞典が贈られていたが、中学校で「語句ノート」の課題をやる時に全く役に立たないとの話を聞き、本屋で何種類かの辞書を比べてみることにした。

多くの人が書いているように辞書には各出版社ごとに特徴があって、現代語に強い・古典に強いなど個性にあふれている。そして最低でも予算は倍必要なのだ。結局クラスのママたちを説き伏せて、卒業積立からあと1500円ずつ捻出し「岩波国語辞典」を記念品にした。今思えば少々顰蹙ものだったかもしれないが、図書券を贈るのも「お金はダメ」と賛同を得られなかった時代のことだから許してもらえると思っている。

「岩波国語辞典」(一部では岩国というらしい)、最近流行の擬人化を試みれば、「広辞苑」の弟分みたいな真面目な性格でトレンドには弱いがメガネを取ると結構イケメンみたいな感じか。

その頃レンタルでみた映画
舟を編む」(原作:三浦しをん 2013年石井裕也監督作品 主演:松田龍平 宮崎あおい)2012年本屋大賞を受賞した小説を映画化、2016年TVアニメ化されている。

新しい辞書「大渡海(だいとかい)」を編纂する辞書編集部に馬締(まじめ)君が配属されるのだが、どの人も相当に個性的。板前を目指す香具矢(宮崎あおい)とのぎこちない恋が好ましい。馬締が語釈を任された「こい【恋】」は「ある人を好きになってしまい、寝ても覚めてもその人が頭から離れず、他のことが手につかなくなり、身悶えしたくなるような心の状態。 / 成就すれば、天にものぼる気持ちになる。」となる。

わぉ。

2020年1月13日月曜日

音声はフリックを超えるか

何をするにもキーボードに慣れ親しんで来た世代は、どうもスマホの入力がぎこちなくていけません。ガラケーの時のテンキーを押す速さもさることながら、最近の画面をなぞるように払う「フリック入力」というやつがどうも馴染めません。

できれば両手の指でフルキー入力(QWERTY入力)したいのですが、夫のお下がりでバッテリー交換して使っているiphone5sの小さな画面では、それはかなりきついのです。

高校生の息子はそれこそすごいスピードで指を滑らせてLINEをやっとりますが、キーボードとなると全然遅くて大丈夫なのかなーと心配になります。まぁ必要が出てくればあっという間に慣れてしまうのが若さの特権であります。いいわね....。

それはさておき

昨年夏、ついにテレビが壊れました。ブラウン管のテレビと違って薄型テレビという奴はある日突然、全く映らなくなるという、そういう壊れかたなんですね。

そこでしぶしぶ4Kテレビにしましたら、もうちょっとしたコンピューターを搭載してましてAndroidで動くんでびっくり。YouTubeを大画面で見よう!と喜んでいたらまたも検索で四苦八苦するはめに。リモコンで画面のキーボードが操作しにくいったらありません。
そこで初めて、スマホでもあんまり使っていなかった音声検索をしてみたら....
ほーら上手くいくじゃないですかー。
ただし、英語は精一杯、発音良くしゃべりましょう(爆)
When you search English words on TV, speak clearly as possible as you can.
やで。

後日実家の母にiPadで音声検索の仕方を教えたら、ものすごく感謝されました。
中高年には音声検索、おすすめです。

ポリ袋調理

もうすぐ1.17です
直接の震災被害はありませんでしたが、実家では1ヶ月以上ガスが止まって調理やお風呂に困っていました。

災害時にポリ袋で調理する方法があちこちで紹介されています。
寒い時に乾パンと水だけでしのげるはずもありませんからね。
温かくて美味しい食事で元気出しましょう
岡部梨恵子 防災備蓄術


普段から練習しておけば良いのでしょうが、我が家の昨日のおかずはこれ。
湯煎でつくるローストビーフ
レシピを見るほどの料理でもなく、
赤身の牛肉ブロック400gくらいを買ってきて、
塩胡椒などして表面をフライパンで焦し
ジップロックなど熱に強い袋に入れて
80℃くらいのお湯に30分浸けておくだけ

保温調理器とか炊飯器を使って温度管理をする時は60℃くらいでも大丈夫

お好みで甘めのソースをかけるといい感じ♪
醤油とワサビで男前に食べるもよし

2020年1月12日日曜日

余命、10年。

時々、思い出してハッとすること。
こんな願掛けをしたことを思い出して。

「神様どうか、子どもを授けてください。
80歳まで生きるなら、10年の寿命をお返しします。」

それを2回繰り返してしまいました。
若かったんですね。

それじゃあと10年そこらしか生きられないってことですか?
わわわ。

まぁそれでも約束したなら仕方ない気もして、
お釣りが出ればラッキーと思うことにしましょう。
お釣りの人生なら少しでも面白いことをしたいものです。

日経電子版に長いぐうたら主婦生活にも活用できそうなヒントがありました。
難しい定年後の「地域デビュー」 50歳から準備を

生まれつきの気質とも上手くやっていかねばならぬ私。
最後は周りに迷惑をかけず、ひっそり消えてしまいたい。






近所のご主人からの素朴な疑問

地域活動で知り合った近所のご主人が
「地域に馴染めって言われてもよく分からないんだよねー」
とおっしゃるので、
「ビジネスマン 定年後 地域デビュー」でGoogle検索したら出るわ出るわ。
で、ご主人に当てはまりそうな記事がこれ。

日経電子版 NIKKEI STYLEのコラムで経済コラムニストの大江英樹さんによる
知らず知らず上から目線 定年地域デビューの落とし穴 ←クリックで開きます

さらに4年前の記事
「定年後は地域活動」の落とし穴

いずれも謙虚にというアドバイスであり、それが通じる相手であることが前提。
でも我慢した先に何があるのかと思うと不毛に感じてしまう気持ちも分からなくはない。

「貧乏なのに働きもしないで我慢してやる地域活動ってどうかしてるよねっ???」
と夫にぼやいたら

「人脈よ」

......あまり同意できない回答。全否定はしないけど。

ある友人の素朴な疑問

年に数回、会うだけの近所の友達がいる。彼女は法律関係の仕事をしていて大変優秀な人なのだが、私のようなぼんやり主婦と仲良くしてくれている。もうずいぶん前になるが、彼女がPTAを辞めるつもりだと話してくれた時、こんな質問を私にしてきた。
「まる子さん(私のこと)ってどうしてPTAの仕事するの?」

はじめは彼女が外国籍だから日本のPTAの制度が理解できないのかな、と思ったのだが強制でもなく子供の為にもならないことを何故やるのか、という素朴な疑問だったようだ。

即答できたかは定かではないが、確かこのように答えたように思う。
「自治会活動とか、公立校のPTA活動については税の一種と私は捉えていて、連帯責任が地域や学校に課せられているから自分がやらないと他の人がするシステムになってる。」

そう、奈良時代の律令制度における租庸調(今の教科書では租調庸)の庸=都に出向いて労役に従事する税、もしくは地方インフラ整備の雑徭に相当するんじゃないだろうか。

公教育を税金の支えで格安に提供していただいているのだから、学校のために尽くすのは当然という麗しいボランティア精神で参加する人があるかもしれない。が、ほとんどの人はジャンケンで負けるかくじ引きでなんとか委員になって、妙な委員会からなんとか協議会に出ることになったり、学校行事でPTAの持ち場はこれだからと言われたままやっているうち何が何だか分からないうちに1年経って終わり、てなところだろう。

改革もやる気になれば出来ないことはないと思う。それには何年も役員を引き受け長になった段階でようやく意見できるものだろうし、そうなったらなったでさらに複雑な構図が見えてきて自分の生活と天秤にかけて諦めざるを得なくなりそうだ。

ママ達もみな仕事を持つようになり、忙しく有能な人ほどコアな役を引き受ける傾向がある。子供の学校生活が上手くいって夫婦の連携も良好な家庭ほど率先してボランティアを引き受ける。会議も夕方から始まり7時過ぎまでお腹が空いても文句も言わず図書室で待っていてくれる子供がいる。終わってから「これから食材の買い物」といって車に乗っていく。

そんな若いママ達に地域の会議に出てくれと頼めるだろうか。土日の貴重な休み、習い事に連れて行ったり保育園の行事に参加したり1週間分の食材の買い物や惣菜つくりのための大切な時間。パートの人なら収入が減る。少しの我慢で皆が助かるなら、と引き受ける構図となる。


2020年1月11日土曜日

「かぐや姫の物語」私的評論

このお正月はブルーレイでこっそり独り、薄暗い部屋でスタジオジブリ作品「かぐや姫の物語」(2013)高畑勲監督を観た。監督は宮崎駿とのコンビで「アルプスの少女ハイジ」「火垂るの墓」などの名作を残し本作品は遺作となった。構想そのものは完成の50年以上前からあったというから興味深い。

前から観たいみたいと思っていたけれど、賛否両論「良い」と言う人「ダメ」だと言う人の真っ二つに分かれているというからつい先送りになっていた。去年の暮れはいろいろ心の面で騒がしかったので、よし!と小遣いを奮発してディスクを購入、邪魔の入らぬよう環境を整えての観賞である。

ここからは多少ネタバレになるのでご容赦願いたい。

印象に残った斬新な演出をいくつか挙げてみると
*竹取の翁と媼が竹の中から出てきた姫君を抱くと、リアルな赤ん坊になる
*媼の乳が張り 翁は育メンになる
*山の青年「捨丸」の存在
*「成金」竹取ファミリーへの貴族による嫌がらせ
*帝のパワハラ&セクハラ
など。

これまで「竹取物語」で謎の多かったかぐや姫の心情を高畑勲が描くとこうなったのだろう。ハイジのようなナウシカのような、もののけ姫でもある少女であり、時折ぞっとするほど女である。

初潮が始まったであろう場面では、髪上げ(成人式)の宴の用意に浮かれる翁に何ともいえない表情を描く。お腹もシクシク痛いのだ。突然やってくる身体の変化と性の対象となるショックが生々しく伝わってくる。

帝の一方的な求婚に身体が透明になって瞬間移動する場面は、愛のない行為に全身凍りつく心情を表現。

最後の既に妻子ある「捨丸」との抱擁については、若い人は不倫と言うらしいが「あめつちよ私を受け入れて!」の台詞に沿って「地上で生きる」ことの象徴と捉えたい。

女子力アップに是非、観ていただきたい作品だ。

父、不在。

父がまだ若く長い入院生活から帰ってきて復職したばかりの頃だ。
日曜になると4、5歳くらいの私を日産サニーに乗せて琵琶湖のほとり膳所公園までドライブに連れて行ってくれた。近江大橋を臨んで湖面にさざ波が立ち、小さな淡水の貝殻を拾ったりして遊んだ。帰りはESSOの2階がファミレスになっていて、白いレースペーバーを敷いた銀色の器にウェハースのついたアイスクリームを食べるのが楽しみだった。

高い、高い、東京タワー見えるかな?
パパ、タバコ臭い。

少し大きくなると琵琶湖バレイでスキーを教えてくれた。
身体の前で抱えてボーゲンを、右にターン、左にターン。
上手、上手。

ずっと一緒にお風呂も入っていた



10歳くらいから私が娘らしくなってくると、もうどうして良いか分からず
父は私と距離を置くようになってしまった。

母曰く、「あの人は子どもだからね。」
自分の父である祖父と何かと比べてしまうらしい。

父と娘。微妙な関係だ。

2020年1月10日金曜日

何気ない日常

どんなに燃え上がるような恋でも、やがて日常に変化していく。

他人なのに最も長く人生を共にし、限りなく色恋から解離していく男女のあり方も悪くはない。願わくばその中に小さな燈を残して、細く長く憧れや尊敬や愛おしさをきらめかせたいと思う。

同じ目的の仕事を、お互いの得意分野で従事できれば人生の満足度も上がるだろうか。

子はかすがい、と言うけれど季節が終わればまた、ちょっと老けた男と女

寂しいね。寂しいよね。って言えるだけ幸せ?

何気ない日常にも、何度か仕切り直しが必要かもしれない。
そこに感謝だけでなくて、できればもう一度恋ができると理想。



2020年1月9日木曜日

川の流れはたへずして

文章を要約する機会があったので、ふとこんな映画を思い出した。

A River Runs Thought IT (1992年製作/124分/アメリカ) 
ロバート=レッドフォードが監督、ブラッド=ピット主演ということで往時の女子としてはミーハーなノリで観に行く。

釣りが好きな人にとってはフライフィッシングのシーンが実に気持ち良いのだそうで、興味の薄い者にとっては「親子仲良く釣りっていいね」くらいの印象だ。

牧師の父親が小学生くらいの兄弟に作文を書かせて、次はこれを半分に要約して来い、次はその半分と厳しく文章指導をするシーンがなぜかとても心に残っている。のちに兄は学者に、弟は新聞記者になるが事故で亡くなってしまう。

楽しいことも、悲しいことも
癒してくれるのはいつも自然
川の流れはいつまで見ていても、飽きない。

決め台詞

母親には貴女が30歳になったらどこかアパートでも借りて離れて住むように、と言われていた。そんな矢先、突然お付き合いしたいという人が現れるのだが...

とりあえず半年くらい続けて考えよう、と気楽に考えていたら
「お願い、もう待てないんだ....」
の一言でぐらりと気持ちが傾いてしまった。

「君を必ず幸せにする」
とか
「一緒に夢を見よう」
とか
シラノ・ド・ベルジュラック(原作:エドモン=ロスタン 同名仏映画(1990): ジェラール・ドパルデュー主演)でもあるまいし、バルコニーの下から声がしてくるのをいくら待っていてもこの国では縁遠くなるばかりだ。

ともあれ、この映画は若い人に是非観てもらいたい。
気持ちを伝える表現力は恋愛に限らず、あるに越した事はない。

2020年1月8日水曜日

松も開けて

今年は訳あって正月気分なんてなかったが、元旦は夫と高校生の息子と家族水入らず静かに過ごした。

お雑煮は白味噌仕立てで祝い大根・金時人参・里芋・丸餅を椀に入れる。最後に柚子をひとかけ。もう昔の話になるが祖父は地元讃岐の風習に習って、丸餅の代わりにあんもちを入れてもらっていた。

今年はあまり餅を食べなかったのにお腹の調子がいまいちだ。昨日寝る前に寒天を煮溶かして固めておいて、容器のまま塞の目に切る。町内の歳末見回りでもらった缶入りのお汁粉をかけたらいい感じのデザートになった。優しい甘さでお腹もスッキリである。

地元を作る

社宅アパートで幼少期を過ごしたことを書いた。
しげるちゃんと白黒テレビの画面を叩いて壊したことを繰り返し聞かされたが、思い出すのはしげるちゃん家のロボコンふりかけが羨ましかったこと、裏の田んぼで遊んだこと。

後にゴルフ場に囲まれた新興住宅地に移り住むが、母が町内会で旧地区の柄の悪い輩に絡まれたこともあり地元中学に進学しなかったこともあって、ここは故郷ではない。かといって父の出身地も縁あって学生時代過ごしたが、2、30年も経つとちょっと違う。

息子は幼稚園・小学校・中学校・高校まで全部市立で通している。旧市街ではなし、親が他府県出身だけにPTAでも多少浮いているが息子にとっての故郷はここ以外にない。生まれた時は育児ノイローゼ気味の私を案じて母が泊まり込みで世話をしてくれ、夫の弁当まで作ってくれた。赤ちゃんの時から長くここを離れたことなどないせいか、遠くの学校へ通うという発想がないという。それはそれで困ったことかもしれない。

同時進行という概念 その4

現在に時間を戻す。
PC画面の小さな人形のマークをクリックするとユーザーが切り替わる。パスワードで保護されていて、ファイル等は共有しない限り独立した環境でお互いを干渉しない。実際には無制限というわけでないが、望めばアカウントはいくつも作ることができる。いわばパラレルワールドである。

壁紙の雰囲気を変え、仕事用とプライベート用と気持ちを切り替えたりする人もあるのだろうか。切り替えの苦手な私は現実の暮らしでさえ、そこに自分が本当に存在するのか不安になることがある。かつてアルツハイマー性認知症だった義母が言っていた、「いつも夢を見ているみたい」な感覚を実は常に感じて生きている。

同時進行という概念 その3

やがて本屋に「やってみようパソコン通信」などという雑誌が出始める。インターネットって米軍の技術なんでしょ?パソコン通信なら国内だし安心かも???余計に危ないことも知らず何でもやってしまうのが若さのパワーである。

固定電話のモジュラージャックを外してパソコンに繋ぐ。
ピーヒョロヒョロ、カーンカーンカーン
サービスは情報提供中心で後の携帯電話へ繋がる内容に加えて、フォーラムとかいう後の掲示板やら○ちゃんねる、さらにはツイッターやSNSに発展する交流の場がすでにあった。個人間のメッセージ交換、グループチャットなど今のサービスの原型が揃っていたが、明らかに違うのはパソコンに電話回線を直接つないでいる窮屈さ。早く回線切らないと電話代でおこられちゃう。「/E」を入力だ。

その頃近所の中学生は公衆電話のところにたむろして、ものすごい速さでボタンを押しまくっていた。ポケベルのメッセージ機能が充実して「88951」(早く来い)とかではなく絵文字まで送って楽しんでいるという。おじさんの携帯電話が肩掛けからトランシーバー型になったそうな。バブルが弾けたというのに、何なんだろうこのうねりは。

同時進行という概念 その2

父がWindows3.1搭載の一体型パソコンを量販店で買ってきた頃から、少しずつパソコンに親しんできた。それまで黒い画面に蛍光色の文字が並んで、ベーシックを組んで計算するとか理数系科目に弱い私には無縁の世界と思っていたのに、白い画面に絵がついていたりゲームできたり面白そう。尤もインターネット普及以前の話である。

父は理系のくせにワープロをちょっと使う程度で結局飽きてしまったが、私たち20代は物凄いスピードでネット社会の濁流に飲み込まれていった。米国の学生は一人一台コンピューター持ってるらしいよ、Macってワープロの字はひどいし日本語変換は「書院」の方が優秀だよね、「一太郎」って使えるの?そんな会話に入れないまま研究室を中退したんだった。せっかくパソコンがあるなら使ってみたい。

デスクトップに複数のソフトを立ち上げて切り替えながら使い、ファイルをフォルダに入れてしまう。机の上に本とノートと辞書を出して作業し、ノートにラベルを貼って棚にしまう。実務をすれば1日で身に付くところを、のろのろと迷走しながらイメージしていく。

同時進行という概念 その1

仕事柄、パソコンを良く使う。
とはいえ使う機能としてはかなり限定的だし、表計算ソフトなどは申し訳程度に触る程度でほとんどブラウザで事足りてしまう。画像処理などもMac付属のソフトかオンラインで大抵のことはできてしまうので、最近は本格的なデザイナーでもなければ「フォトショ」や「イラレ」のような値の張るソフトは特に必要ない。

正直タブレットPCでもいいのかもしれないが、長年親しんだキーボードなら素直な気持ちが書ける気がする。ブラインドタッチは練習不足で不完全だけど、のんびり話すのと同じくらいのペースで文章を書くくらいの事はできるから不自由していない。

パソコンはここ数十年で大きく進化したけれど、知識のストレージとしての概念はやはり人間の脳がモデルになっているのではと思う。このPCでは画面を開くとアカウントがいくつかあって、仕事用・プライベート用・息子用・ゲスト用と住み分けている。ハードディスクを分け合っているとはいえ、クラウドサービスなどで外部のサーバーと繋がっていたりするので玄関は並んでいるがそれぞれマンションを1棟ずつ持っているような感覚である。


2020年1月7日火曜日

見たことのある景色

雨上がりで白く靄のかかる稜線を遠く眺めながら、家路を急ぐ。
見慣れた街並み、いつもの我が家。

子供の頃住んでいた社宅アパートは、どの部屋も3LDKの決まった作りだった。階段を挟んで左右反転の間取りなのが不思議で、隣のしげるちゃん家にしょっちゅう上がり込んでいた。当時としては新築ということもあり若い世帯に大人気の物件だったらしい。

今の我が家は郊外の住宅地に築30年を超えたところで流石に老朽化してきたが、当面建て替えるつもりもない。前の住人が考えた間取りは使いにくく、妙なところに柱や梁があって背の高い夫は頭をぶつけては文句を言う。いっそ左右反転してみたら少しは使い勝手が良くなるかなと笑った瞬間、軽いめまいがした。



どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...