2020年1月14日火曜日

空っぽの器

今回はちょっとシリアスに
三度目の殺人』(2017年 監督:是枝裕和 主演:福山雅治 役所広司)
をとりあげます。ネタバレ注意。

是枝作品は『そして父になる(2013年 出演:福山雅治 リリーフランキー 尾野真千子 真木よう子)『万引き家族』をご覧になった方が多いと思う。

家族を取り上げることの多い監督作品の中で、かなり救いがなく後味のすっきりしない仕上がりだ。役所演じる殺人の容疑者である三隅という男、過去にも殺人の前科がある。証拠も揃っていて死刑は免れないが、動機がはっきりしない。先の事件で取り調べに当たった刑事は三隅のことを「空っぽの器」と表現する。親しくなった相手の心を読み取りその人の意思で行動する、具体的には代理殺人という意味合いらしい。

相手の気持ちが分かるというのは思いやりのひとつだろうが、この場合共感ではなく心の「乗り移り」ならぬ「取り込み」だ。

相手の求める人物像を無意識で演じてしまうのもまた、罪なのかなぁと思う。

どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...