2020年1月7日火曜日

見たことのある景色

雨上がりで白く靄のかかる稜線を遠く眺めながら、家路を急ぐ。
見慣れた街並み、いつもの我が家。

子供の頃住んでいた社宅アパートは、どの部屋も3LDKの決まった作りだった。階段を挟んで左右反転の間取りなのが不思議で、隣のしげるちゃん家にしょっちゅう上がり込んでいた。当時としては新築ということもあり若い世帯に大人気の物件だったらしい。

今の我が家は郊外の住宅地に築30年を超えたところで流石に老朽化してきたが、当面建て替えるつもりもない。前の住人が考えた間取りは使いにくく、妙なところに柱や梁があって背の高い夫は頭をぶつけては文句を言う。いっそ左右反転してみたら少しは使い勝手が良くなるかなと笑った瞬間、軽いめまいがした。



どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...