我が家は築38年、木質パネル接着工法の量産品で築15年のところを買って以来、あちこち手直しをしながら住んでいる。屋根葺き替え、外壁塗装2回、風呂取り替え、軒下の波板延長、玄関吹き抜け上小部屋増設、押し入れをトイレに改造、他二箇所のトイレリフォーム、外構作り替えなど...。
築40年近い古家の客観的な評価は固定資産税の通りでしかないが、雨風を凌ぎ、住む人たちに健康で安全な環境を提供した風格が備わってか、要は気に入っている。どこかへ引っ越す時は家ごと持っていきたい。アメリカ絵本の古典と言われるバートン(Virginia Lee Burton)の『ちいさいおうち』(The Little House 1942)の影響を受けてしまったか、家を擬人化することに抵抗がない。子供の為に安全柵を至る所に取り付けたネジ穴、ぶら下がって歪んだドアの蝶つがい、下手なDIYの痕跡など他人から見れば汚いだけだろう。とても丁寧に暮らしたとは言えないが、50年のうちに2組の夫婦が住み、4人の赤ん坊が大人になり、年寄りが残されたなら立派なおうちの歴史かなと思う。
もしモノに心があるなら、壊れるまで使い倒して欲しいと言わないだろうか。壊せという訳ではないが、気に入ったモノを古くなるまで使うことができれば、それは幸せな消費生活だと思う。地震のない米国東海岸で、石とレンガでできた家ならば移築をしてもまだ100年持つだろうが、自然災害の多い日本でこんな物語が描かれることはなかった。次の地震にどんな備えが有効なのか、何ができるのか、考えなければと思いつつ正直あまり気が進まない。壊れるまで使いたいと言うのもファンタジーであることを知っている。