源氏物語に登場する女三の宮は、見た目は可愛らしいが「年齢の割に幼すぎる」「内面がない」とか散々な書きようで、高貴な身分に対する紫式部のやっかみではないかと言われることもある。また冷泉帝出生の秘密の応酬であり、紫の上の死への伏線とする人もある。
誰の説なのかまだ確認が取れないが、頭が弱い、知恵遅れと解釈する人もあるという。「幼い」「ぼんやりしている」「女性たちの話に入っていけない」「判断が鈍い」「不器用」などの表現を拾い集めると、今で言う発達障害の特徴にも似ていると思う。他でもない当事者がそのように感じているのだが確証はない。ただこれは身分の高い姫への嫉妬心ではなく、ちゃんとモデルがいてそれを忠実に表現しているのではないかと思える箇所がある。
一つ目は猫につけたひもが引っかかって御簾が上がり、蹴鞠をして遊ぶ公達に姿を見られるシーン。高貴な姫がボーッと立ったまま庭を眺めていて御簾がめくれたのも気付かない。この時代のこの身分の女性なら風呂上がり裸で縁側に仁王立ちレベルだろうか。
もう一つは柏木からの懸想文を隠そうと座布団の下につっこんだ三の宮。「同じ色の文を源氏の大臣がご覧になっていました。あれはどうされたのですか?」と侍従に聞かれて飄々と「座布団の下に入れたけど何か?」とすぐ事態がつかめない。
母君が早く亡くなったから教育がなされていないというのは朱雀帝の第三皇女としては考えにくく、柏木を引き入れてしまうような頼りない侍従しか付いていないのは、そういう年近く優しい感じの女性しか側に置きたがらない三の宮の性格も垣間見える。本当は「宮様それはいけません!」と叱ってやらねばならないのだが。
恋愛も経験せず一回のレイプで妊娠する不運、訳のわからないままに出産、命を絶つように落飾し舞台から姿を消す。身分の高い女性の中に、一定数こうした性格の人がいたと考えられはしないだろうか。