2022年4月24日日曜日

油持ってきたけぇ!

 『海賊と呼ばれた男』(東宝2016)を観る。出光興産の創業者である出光佐三がモデルの、百田尚樹による小説の映画化で多少美化が過ぎる面はあるが、起業家の伝記としてもっと知られてもいいと思う。映画では日章丸事件について英国海軍に凄まれるだけで現BPと法廷で争うところは省かれており、米国メジャーへの挑戦を軸に話の展開がすすむ。映画制作に当たってあちこちに配慮すれば無理もないだろうし、エネルギー問題から戦争を肯定すればたちまち国内からバッシングを受ける。

南方の石油開発で米軍捕虜となって亡くなった親類のことは前に書いた。敗戦国となった日本はGHQの統制化で軍隊を持たぬ国にさせられ、平和憲法さえあれば無傷でいられるような刷り込みを受けてきた。世界中同じような価値観の上で、双方武力衝突を避けるつもりなら世話はない。世界のサプライが複雑に絡み合っている中で、世界中の経済が細かな駆け引きで成り立っているかと思うと、突然の侵略戦争でめちゃめちゃに壊されたりする。

佐三最期のシーンでは佐三の幼いひ孫が、初代日章丸の精巧な船模型をじっと見つめる演出がある。1980年代はイランイラク戦争が勃発し、米国はレーガン政権に移ったところだ。今はロシアによるウクライナ侵攻で多くの犠牲者が出ているが、イライラ戦争の頃民間人がスマホを持って世界に発信していたらもっと悲惨な映像がテレビに映っただろう。米国軍は毒ガスも使ったし、その後の無秩序となった地域からは際限なくテロリストが派遣されてくるようになった。

再生エネは不可欠でも、まだ化石燃料には頼らざるを得ない。原子力だってまだ湯を沸かしタービンを回している段階では蒸気機関と大きくは変わらない。開発にもリサイクルにも電気が必要だ。日章丸はこれからどこへ向かったらいいのだろう。



どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...