次男の出産後、まる一日経った朝は私自身の誕生日でした。ワゴンケースに入れて新生児室から連れてこられた赤ん坊は小さく、帝王切開で産んだだけにもう少しお腹に入れておけば良かったと可哀想になりました。やや生臭い誕生日の話。
長男の時は臍の緒が首に絡んで心拍が下がり、緊急手術になっただけに「とにかく死なんでくれ」とそれだけ祈る思いでした。天神祭の夜にふさわしく外は雷、激しい雨が窓を叩き、高速を飛ばして病院に駆けつける夫、早朝の手術の連絡を受けて始発できてくれた実家の母。てんやわんやの大騒ぎ。
代わって次男と二人、かすかに春の日ざしが入る小さな病室で静かな誕生日を迎えました。手術で出産しても母乳がきちんと出始める人体の不思議。出始めの初乳は黄色く、新生児に必要な免疫をつける成分が含まれているそうで。
私自身は相当な難産で生まれたと聞いています。当たり前のことですが、誕生日というのは母親の出産記念日なのですね。どこか他人事なのは、自分の名前を自分で決められない窮屈さにも似ています。
もうこんな歳になって誕生日なんて嬉しくないとかではなく、この世に生を受けたことを受け入れ、意識してみる日でありたいと思っています。
2020年2月19日水曜日
どうせ死ぬんだから
「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...
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