2020年3月22日日曜日

いとやむごとなき際にはあらねど

林望先生の『謹訳源氏物語』を読み始めた。「後書き」の方は電子書籍にしたが、やはり本編は紙媒体が欲しい。まず本を買うところなのだが、文庫版だと紙の質もそれなりなので直に傷んでしまうだろうと、単行本にした。どこから読むか迷ったけれど結局始めから揃えたくなり、全巻揃えるには小遣いも心許ないので、ネットで中古を求めた。

セコハンとは言っても糸綴りでの製本にこだわった作りは、どのページも開きやすく和綴じの良さもあって読書に最適だ。林先生のこだわりは勿論中身であって、後書きにもあるように「作者の言いたかったこと」が伝わるよう工夫されている。

文体はそれほど格調高いわけではないし、平易な表現・親しみやすさが軽すぎると感じる人もあるだろうが、それが10代男子「光源氏」らしさと捉えれば納得できまいか。
「読者のご想像にお任せしますよ」と冷ややかで突き放したような作者の姿も、いい塩梅。

第1巻 桐壺 帚木 空蝉 夕顔 若紫 

「帚木」は「雨夜の品定め」の帖で、作者自身がひょっとすると男に姿を変えて物語をどう展開するかあれこれ考えを巡らせているのではとも想像したりしてみる。といっても既にあまたの研究者や文学者が解説しまくった後で恥ずかしくて何も言えないのだけど、歳を取るごとに目の付け所、面白さの質が違ってくるのだけは確かである。

センパイ達の恋バナを聞いているような聞いてないような、10代男子の拗ねたような横顔はどうしたって高校生の息子に重なってしまう。

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どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...