セコハンとは言っても糸綴りでの製本にこだわった作りは、どのページも開きやすく和綴じの良さもあって読書に最適だ。林先生のこだわりは勿論中身であって、後書きにもあるように「作者の言いたかったこと」が伝わるよう工夫されている。
文体はそれほど格調高いわけではないし、平易な表現・親しみやすさが軽すぎると感じる人もあるだろうが、それが10代男子「光源氏」らしさと捉えれば納得できまいか。
「読者のご想像にお任せしますよ」と冷ややかで突き放したような作者の姿も、いい塩梅。
第1巻 桐壺 帚木 空蝉 夕顔 若紫
「帚木」は「雨夜の品定め」の帖で、作者自身がひょっとすると男に姿を変えて物語をどう展開するかあれこれ考えを巡らせているのではとも想像したりしてみる。といっても既にあまたの研究者や文学者が解説しまくった後で恥ずかしくて何も言えないのだけど、歳を取るごとに目の付け所、面白さの質が違ってくるのだけは確かである。
センパイ達の恋バナを聞いているような聞いてないような、10代男子の拗ねたような横顔はどうしたって高校生の息子に重なってしまう。