一九三四年冬ー乱歩(新潮文庫)。
奇妙な小説だった。実際にあった?のか江戸川乱歩失踪事件から想像を膨らませ、独特の世界観に誘う。乱歩ファンならこたえられないだろうし、世界の推理小説が本歌取りされているために、相当読み込んでいないと本当の面白さは分からない。そんな読み手を選ぶ、癖の強い一冊。架空の作中作「梔子姫」(くちなしひめ)は支那人の幼さも残る娼婦で異様なほど身体が柔らかい、そして口がきけない。冷たく哀しい官能の世界にずるずる引き込まれるような感覚。もう一つの唇が発する「スキ…」
乱歩のオトナな作品も(『人間椅子』とか)また読んでみたい…かも。