2020年3月28日土曜日

明智小五郎だけじゃない、乱歩。

先日、川上弘美の小説『センセイの鞄』のドラマ化(2003年wowow)されていたのを動画配信で観た。向田邦子とのコンビ作品「寺内寛太郎一家」「時間ですよ」で知られる久世光彦の演出で、70歳で亡くなる数年前のものだった。ドラマはそれなりに良かったのだが、ふとその演出家の書いたものを読んでみようと思った。

一九三四年冬ー乱歩(新潮文庫)。
奇妙な小説だった。実際にあった?のか江戸川乱歩失踪事件から想像を膨らませ、独特の世界観に誘う。乱歩ファンならこたえられないだろうし、世界の推理小説が本歌取りされているために、相当読み込んでいないと本当の面白さは分からない。そんな読み手を選ぶ、癖の強い一冊。架空の作中作「梔子姫」(くちなしひめ)は支那人の幼さも残る娼婦で異様なほど身体が柔らかい、そして口がきけない。冷たく哀しい官能の世界にずるずる引き込まれるような感覚。もう一つの唇が発する「スキ…」

乱歩のオトナな作品も(『人間椅子』とか)また読んでみたい…かも。
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どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...