10年くらい前だったか、近所の方からお子さんにとカブトムシの幼虫をもらった。
何でも庭に飛んできたのを捕まえてオスメス一緒に飼っていたら卵を産んで、それが幼虫になってを何度も繰り返してきたという。下のお子さんが中学生になって世話をしなくなったので、残っていた幼虫のもらい手を探していたのだそうだ。
他からも何匹かもらって一緒に飼っていたら、全部成虫になり一匹だけオスが生まれた。夏の終わりには腐葉土のマットの中に白いつぶつぶがいくつも見つかる。やがてつぶつぶは小さな幼虫になって冬を越す。
翌年のケースはすごく賑やかだった。毎日の昆虫ゼリーの消費量も馬鹿にならない。オスメス5、6匹ずつくらいいただろうか、やたらに体の大きいオスがあまりに喧嘩ばかりするので案外、卵は残らなかった。夜中もガサガサうるさいので気持ちが悪くなり、翌年は数を減らして繁殖は最後にしたと思う。
感動的だったのはキアゲハの羽化を見た時。パセリについたキアゲハの幼虫が可愛くて割り箸にさなぎを作らせて毎日の変化を楽しみにしていた。羽化の時、しわしわの羽に体液を送りゆっくり羽を広げていく。最後に飛び立つ前は結構な量のおしっこをして体を軽くする。モリモリ葉っぱを食べて愛らしかった頃とは全然違う姿で、悠々と飛んでいく。伴侶と出会って卵を産むためだけの姿で。
解剖学者で虫好きで知られる養老孟司さんが、昆虫の変態について「二つの種が合体した」「ケムシとチョウはもともと違う生き物だと考えるほうが自然」と表現しているのが頭から離れない。(新潮社WEBマガジン「考える人」対談 池田清彦×養老孟司「虫との大切な時間」)
自分も繁殖の時は別の生き物だったかもしれないと思うと、妙に納得してしまった。