2020年3月6日金曜日

鳥啼き魚の目は泪

お買い物専用になって久しく、あまり活用していなかった軽自動車を売った翌日。息子の自転車を借りて野菜を買いに行こうと思ったら、「友達とブックオフに行くー」と出かけてしまった。元より車は夫が釣りに乗っていって車庫は空、仕方ないので徒歩で直売所へ向かう。

農道を通って帰れば、畑にはソラマメがすくすく育ち、空の青、雲の白、小鳥のさえずり。まさに春爛漫の景色に背中のカバンの口が開いているのも道ゆく人に指摘されるまで気づかない気の緩みようである。あまり乗らなかった車なのに、意外にも傷心気味なのだ。「ドナドナ」を歌いたい。

ウグイスのさえずり・警戒の声、お腹が橙色のジョウビタキ、白黒お洒落なセグロセキレイ、一瞬見えたカワセミ、魚をねらう大きな白いサギ、ガーガー鳴くカモたち。にぎやかな鳥たちの向こうにはメガソーラー の工事が進んでいる。

かつて親しかった人が利用していた貸農園は荒地になっていた。笑顔が素敵で、新鮮な野菜や手作りの美味しいものをこしらえてはみんなに分けたり、子供たちを集めて楽しいことをする天才だった。親類のゴタゴタ・経済不安や学校ボランティアで心折れそうな私を支えもしてくれた。どんなお返しをしたら喜んでもらえるかと考えるうち、彼女の一家は東北へ引っ越して行ってしまい、不登校の息子さんのことも聞けず仕舞いで疎遠になってしまった。社交的な人だったので親しい人はたくさんいたのだが、話しにくいのか本当に知らないのか誰に聞いてもさぁ…?という反応だ。

いつか楽しい土産話を持って彼女の住む東北を訪ねたい。あの時はありがとう、と言えるまで待っていて欲しい。

どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...