農道を通って帰れば、畑にはソラマメがすくすく育ち、空の青、雲の白、小鳥のさえずり。まさに春爛漫の景色に背中のカバンの口が開いているのも道ゆく人に指摘されるまで気づかない気の緩みようである。あまり乗らなかった車なのに、意外にも傷心気味なのだ。「ドナドナ」を歌いたい。
ウグイスのさえずり・警戒の声、お腹が橙色のジョウビタキ、白黒お洒落なセグロセキレイ、一瞬見えたカワセミ、魚をねらう大きな白いサギ、ガーガー鳴くカモたち。にぎやかな鳥たちの向こうにはメガソーラー の工事が進んでいる。
かつて親しかった人が利用していた貸農園は荒地になっていた。笑顔が素敵で、新鮮な野菜や手作りの美味しいものをこしらえてはみんなに分けたり、子供たちを集めて楽しいことをする天才だった。親類のゴタゴタ・経済不安や学校ボランティアで心折れそうな私を支えもしてくれた。どんなお返しをしたら喜んでもらえるかと考えるうち、彼女の一家は東北へ引っ越して行ってしまい、不登校の息子さんのことも聞けず仕舞いで疎遠になってしまった。社交的な人だったので親しい人はたくさんいたのだが、話しにくいのか本当に知らないのか誰に聞いてもさぁ…?という反応だ。
いつか楽しい土産話を持って彼女の住む東北を訪ねたい。あの時はありがとう、と言えるまで待っていて欲しい。