2020年5月1日金曜日

バラの花輪を編むように

かつて通った学校で、ある朝「ロザリオの祈りを唱える係」に指名されてしまい大いに面食らった思い出があります。信者でもなんでもなく、たまたま偶然に。

5月は聖母月ということで、カトリック教会では小さな十字架のついた数珠のようなものを繰りながら「天使祝詞」を150回唱えるそうです。ロザリオの語源はrose。バラの花輪を編むようにロザリオの珠を繰って祈りを唱える行事です。慌ただしい学校の朝の礼拝では略式に「主の祈り」1回と「天使祝詞」10回を唱えましょうということで、覚えてもいないうちから薄暗い聖堂の中でマイクを渡され焦ったのなんのって。

「天使祝詞」はいわゆる「めでたし 聖寵充ち満てるマリア」で始まる、原文ラテン語の文語和訳。最近は現代語訳で唱えるそうですが、少し物足りなさを感じるのはなぜでしょうか。文語の表現がやや女性らしさが強く生々しいからかもしれません。初めてのお祈り係の後も、5月のマリア月間は毎日お祈りは続き、お陰様で信仰の方はさっぱりですが40年近くたってもちゃんと覚えています。曲のついたAve Mariaもざっと調べても10曲以上、有名どころだけでもグノー、シューベルト、カッチーニ、モーツアルト、リスト。ビゼーやヴェルディも。

学校ではアルカデルトのAve Mariaを教えてもらいました。高音が出ないのでアルトパートで覚えていてメロディがあやふやだったりするのですが、ラテン語で歌える唯一の歌です。
あらためて歌詞を辿ってみると「天使祝詞」の最後の部分がありません。
Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,
benedicta tu in mulieribus,
et benedictus fructus ventris tui Iesus.
Sancta Maria mater Dei,
ora pro nobis peccatoribus,
nunc, et in hora mortis nostrae.
Amen

♪ora pro nobis の後
(祈りたまえ)罪人なる我らのために 今も臨終の時も

お祈りとしては大事なところなのに、曲に合わせてカットしてしまうってどうなんでしょう。実はこの曲、ルネサンス期のアルカデルトのシャンソンを元に19世紀フランスの無名の作曲家がアレンジしたことが分かっているそうです。因みにグノーのアヴェマリアはちゃんと最後まで歌っています。詰めが甘いのはレベルの違い、それとも作曲重視からなのでしょうか。


どうせ死ぬんだから

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