2020年5月24日日曜日

私の耳は貝の耳

以前、金魚の水槽にカワニナという小さな巻貝を入れていました。元は水槽の壁をきれいにする目的で石巻貝を買ったのですが、数年経って死んでしまいました。その代わりに近所の川でたくさん繁殖しているカワニナを10匹ほど頂いてきたという訳。

結構大きくなった個体もありましたが、条件が悪かったのでしょうか、いつのまにか殻に穴があいて弱り金魚に食べられてしまったようです。

二枚貝はヒンジのところ、巻貝は一番尖ったところが稚貝の頃の殻になります。そこから少しずつ成長して殻を伸ばして大きくなったのですね。だから子供の頃の部分が一番薄くて脆いのを天敵は知っていて、狙って攻撃するとか。ヒトに例えるのは可笑しいのですがなんだかかわいそうになります。

この渦巻きは、生きてきた軌跡。

ヒトは過去の膨大な記憶を、儚い信号に置き換えるためこんなに大きな脳を持ったのでしょうか。母体から出られるギリギリまで胎内で頭を大きくし、頭蓋骨もつながらないうちから言葉を発する。重心バランスが悪いので1年経ってようやく歩く。

人の一生を貝の模様に収まるくらいシンプルにまとめて並べておけたらどうでしょう。
模様には、よくみると個性があってその人らしさが感じられるような。
その人を知る人がいなくなったら、水に溶けてなくなってしまうような。


どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...