Stay Home が続いている。人は家に長く留まると手の込んだ料理をしたくなったり、道具が欲しくなったりするようだ。パン作りに欠かせない強力粉やドライイーストが品切れになったり高価な調理家電の売れ行きが好調だったり、いわゆる巣ごもり消費が生じている。しかしどんなに手間のかかる美味しいものを作っても、片付けを済ましほっとするとまた次の食事の準備が待っている。誰か、せめて献立だけでも考えてはくれまいか...。
もちろん予算に合わせて、所要時間も含めてである。
ここに、大村しげ『京のおばんざい』(「暮らしの設計」1980年 中央公論社)というムックがある。初版本は読み過ぎてあまりにボロボロになってしまったので1992年の第10版が出た時買いなおした。
冒頭には「おばんざい」が広く使われた用語であることを示す、幕末の料理本が取り上げられている。この嘉永二年大阪で出版された『年中番菜録』には、関東・関西の庶民の日常のおかずが載っていて、台所に立つ女性の強い味方になったのであろうか、明治期に版を重ねたという。
附言の引用をさらに引用する。
「番菜は日用のことなれば いまだせたいなれざる新婦はさらなり 年たけたるまかないの女といえども折ふしおしつまることあり 此書は只ありふれたる献立をあげ めづらしき料理または価とふとく番さいになりがたき品は一さい取らず ふと思案にでかぬる時のたよりをむねとすれば つねづね手まわりに置 番菜の種本と心得たまふべし」
著者は千馬源吾 撰とあって、船場の板前「源さん」のレシピを編集した?などと想像を巡らせてみる。私など主婦歴20年以上で「年たけたるまかないの女」だが、おしつまってばかりである。日本では170年経っても女性が台所で献立に困っているとはこれ如何に。ただし当時と違うのは、もはや家のしきたりなどなく好き勝手に献立を決められることだろうか。
どうせ死ぬんだから
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