2020年5月13日水曜日

野苺は甘く渋く

庭で放ったらかしにしている苺が実をつけている。栽培にはビニルハウスなど温室を利用するので今や立派なブランド苺が1月や2月に旬を迎えるが、露地栽培では4月頃花が咲いて5月に実がついて赤くなる作物だ。

肥料をやったりマルチング(敷き藁やポリ袋で地面を包む)する年もあるけれど、大抵は面倒で観賞用と思ってあまり期待していない。というのも虫や鳥に大半を食べられてしまうので、つぶれた苺の甘い匂いが立ち込める中、無事な実を這いつくばって探すのが苦痛だし、無農薬なのでダンゴムシやなめくじとも仲良くやらねばならぬ。味の方はまぁまぁいける、かな。

一般的な品種に一つだけ観賞用のワイルドストロベリーが混じっている。葉っぱの付き具合が食用と違っており花も実も小さい。食べられないことはないが種が多くて固くあまり甘くない。欧州ではウェッジウッドを筆頭に図案にも好んで用いられる。

思春期の女の子向け推薦図書に必ず挙がってくる、梨木香歩『西の魔女が死んだ』で中学生の まい と祖母が裏山で摘んでジャムにするのもこの品種。英国人の祖母が「Wild strawberries」とわざわざ言い換えるのも、一度かじってみれば日本の甘くてジューシーな苺とは全く違うから納得だ。

伴侶を亡くした悲しみの中、登った裏山に昔捨てられた畑があって、そこに野苺の花が咲いていた。それから歳月が過ぎ、「今年は まいが手伝ってくれました。」嬉しそうに丁寧にジャムを煮る。ふとしたことで学校に行けなくなった まい であったが、何を感じたろうか。

映画化もされたこの作品、控えめな演出で映像が美しい。

どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...