2020年10月24日土曜日

鬼滅の湿度

 大人も子供も「鬼滅の刃」の虜だ。ヒットの真相は深夜時間帯のアニメ配信とSNS等々と言われるが、基本的に少年漫画で陰惨さがなく家族愛がベースになっているから、安心してお茶の間で見られる内容なのが大きいと思う。創作民話の世界にアニメ独特のワールドが不器用に混ざっているのが何故か新鮮に感じる。真剣なストーリー展開の中にふざけた部分を適度に食い込ませる手法は日本の漫画の特徴と言えるし、元を辿れば狂言回しがそれに当たり芝居で重要な役割を果たしている。

妖怪と闘う系として手塚治虫の「どろろ」があるが、こちらはどこまでも陰惨なだけにこれからもヒットはしないだろう。アニメも白黒テレビの頃のものだけでなく、つい最近も試みられているから一定のファンはいるらしい。途中で連載を打ち切られて最終回を大急ぎで取りまとめ手抜きな部分は残念だし、最後にどろろが女の子に戻るあたりは手塚のワンパターンを感じざるをえないけれど、始めの場面設定がもう今や差別的偏見的問題にどう対処していいか分からないほどエゲツないのだ。

「鬼滅」の炭次郎は家族を殺されても死んだ鬼に情けをかける少年であるのに対し、「どろろ」の百鬼丸は実の親が妖怪と取引をしたが為にあらゆる身体のパーツを失って生まれてくる。妖怪を倒し身体と同時に憎しみや怒りなどの感情を徐々に取り戻していくという、ものすごくネガティブな救いようのない展開だ。ドライにやればやるほど恐ろしく、どうにも収集がつかなくなったのだろうか。無理やりな終わり方が腑に落ちず、本当はどうしたかったのかなぁと時々考えてみたりする。



どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...