2020年11月13日金曜日

名は体を

 名付けに古風な名前を選ぶ家庭が増えているとかで、令和生まれにして「和子」とか「はつゑ」「民子」なんてのをまとめてシワシワネームというそうで。これは少し前の「光=ピカ」「宙=そら」といったキラキラネームに対する言葉である。アラフィフの私の頃は、女の子といえば「直子」「恵子」「朋子」など圧倒的に○子が主流だった。不思議なことに○子だと結婚して姓が変わってもそんなに音便や字面が悪くなることもないのだ。「オダ マリ」さんや、「マキ マキ」さんになっても、子が付いていればそう気にならないと思う。

曽祖母にあたる人は、元から姓と名前が一致している。仮に姓が「吉川」だとすると名前は「ヨシ」。「ヨシカワヨシ」これはいくら明治時代でもからかいの対象に為りかねないのでは。まったく親のセンスが疑われる。尤もヨシには兄がいて当然嫁に行ったら婚家の姓を名乗るから何でもいいと思ったか、それとも実家の意思を継いで欲しいと言う願いからか。

ところがその願いは図らずも叶えられてしまう。兄が商いの関係で大陸へ行って家を継がぬことになり、ヨシは婿養子を取る。お相手の正太郎(仮)はなかなかのイケメンだったらしく、縁談はあっさりまとまり一男一女を儲け幸せに暮らした、のであれば良いが。

このイケメン正太郎君は他にも家庭を作っており、あろうことかほぼ同時進行で一男一女を儲けておったのでした。事の次第を知ったヨシカワヨシの父は烈火の如く怒り、正太郎との離縁を要求する。ところがヨシさんは抵抗したということである。その後については親類中あまり詳しく語ってくれないので詳細は不明なのだが、正太郎の面影を受け継いだであろうヨシの息子(私の祖父)も面食いの祖母の目に留まったというから、当時ではイケメンだったのかもしれない。父親の名前を一字もらったが性格は違ったようで、家庭に冷たくDVの話ばかり聞く。若い頃清元を嗜んだというから粋な面もあったのだろうか、私の知る限り表情のあまりない静かな老人だった。

名前は自分では選べないだけに、本人が気に入ってくれるものを付けてやりたい。画数もほどよく字面もいいものを。○○さん、と愛を込めて呼んでもらえるような名前を。


どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...