2020年11月3日火曜日

ハイカカオコロニアル紀行

 カカオ豆の価格が高騰すると言われながらカカオ含有量の多いチョコレートが人気である。入手困難と思うほど欲しくなるのが人情で、産地別に食べ比べしたくなったりする。ワインのことは分からないがコーヒーなら多少飲み比べもしたので、チョコレートも違いが分かるかもしれない。

日本が輸入するカカオ豆の約7割を占めるのがガーナ産で、他にはコートジボアール産、ベネズエラ産、エクアドル産が入ってくる。珍しいところでブラジル、キューバ、ドミニカ共和国、ベトナム、と赤道を中心にコーヒーが育つ緯度の国々ならカカオの栽培はできるようだ。

ブラジル産というチョコを試食してみた感想。食べ慣れた味とあまりに違うので「えっ!」という驚きがあった。練り具合や温度などでも違ってくるのだろうが、強い野趣味と動物的な香り?がブラジルの特徴なのだろう。コーヒーでもモカは酸味が強いとか、ブルーマウンテンはバランスが取れてベトナムはローストが独特というような特徴を専門家が沢山書いているが、素人は好き嫌いで選ぶのみ。今のところナッツ感のあるベネズエラに軍配をあげたい。

コーヒー、紅茶、チョコレート、タバコ、砂糖と欧州が大航海時代以降植民地で手に入れた嗜好品には、味や香りやアルカロイドの効果以外に異国への強烈な憧れと野心がかぶさってくる。毒か、薬か、無意識に海の向こうのパワーを取り込むべくチョコレートを食べるのではないだろうか。ホテルのインテリアなどでコロニアルスタイルとか、本当に意味わかって言ってるんかと思いつつ、富が集中すれば不幸な歴史を忘れるほど魅力的なものが生まれるのも事実。嗜好品は少々高くても我慢して量はほどほどに。

植民地ときて思い出した映画『ピアノ・レッスン』(The Piano 1993年 参考:映画ウォッチ)19世紀スコットランドから写真一つで未開の地ニュージーランドに嫁いでくる女性の話。女性は失語症で話せないし連れ子もいる。ピアノだけは手放したくないと無理を言って船に乗せて嫁いでくるが、夫はピアノなんて重い物持ってくるなと運んでくれない。現地人に同化した不思議な男が浜で弾く女性の姿に惹かれ、ピアノを夫から土地と交換で買い取って黒鍵の数のレッスンを条件に返却する約束をする。

当時学生だった私はR指定のラブシーンもさることながら、指を切り落とすいう強烈なDVがあまりにショックでその後の内容がおぼろげになってしまっている。本当の見所はそこでなくて、最終的に和解してからの新たな展開の部分だ。カヌーからピアノを海に沈め共に心中すると思いきや、引き揚げられて男と娘の三人で新しい生活へ向かう。北の町で擬指をはめて新しいピアノを軽快に弾く姿は、ひたすらに粘り強い。






どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...