2021年5月17日月曜日

6月のメロン

 今朝のニュースで関西医科大学が「光免疫療法」という新しいがん治療の研究拠点を置くとのことだった。患部に投薬してレーザー光を照射する治療法で患者の身体に負担が少ないという。一昔前はがんになったら手術をしても1年かそこら保てば良いくらいの認識だったから、技術の進歩には大いに期待する。

今年日本列島は早々と梅雨入りしたが、この季節思い出すのは祖父の最期である。68歳で胆管癌が見つかった時はすでに末期、しかし本人は治る気満々だった。よって告知することなく無理な手術をして死期を早めたのだろう。最期は「これは癌だ。」と自分で悟り余命幾ばくも無いと知ると、会社の一部の人を除いて秘密裏にしておくこと、葬式の段取りなどを病床で母に詳細に伝えたそうだ。痛み止めの点滴は常時接続、脇腹には太い管が差し込まれており、激痛に耐えられない時はモルヒネを打った。

どんなに隠していても祖父の入院の話はどこからか漏れて、連日マスクメロンが祖父の自宅に届けられ、熟れて食べごろになったメロンが冷蔵庫に溢れた。だから40年近く経た今もメロンは苦手だし、自分もがんで死ぬんだという刷り込みがある。そんなものは紙の味噌汁...ではなく神のみぞ知る、なのだが。

病院の付き添いに始まって入院、密葬、社葬、社宅扱いにしていたゴミ屋敷の明け渡し、祖母のマンション探しと引っ越し、相続税の手続きなど母はよくやったなぁと思う。そんな話を本人にしたら、祖父の死の間際に何だかとてつもない性欲が湧き上がってきてびっくりしたと真顔で言ってきて、こっちが驚いてしまった。

先妻が亡くなった時「お父ちゃんの中にお母ちゃんが入ったぞ!」と言いながら祖父はその遺骨を飲み込んだと言うから、相当にアツい性格の親子とも言える。遺骨を食べる習慣といい、自称淡白な母の性欲といい、生々しくショッキングなイメージのつきまとう梅雨時はとにかく早く終わって欲しいと願うばかりだ。

どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...