2021年5月25日火曜日

いづれの日にか国に帰らん

 先日実家に行った折のこと、私の曽祖父にあたる人の写真が飾ってあった。昔仏壇にあったものと同じで、明治の男らしく凛とした立ち姿である。なんでも母の従兄がその写真を見たことがないというので引き伸ばしたものを送ってあげるという。その従兄といっても80歳近いはずで、今になって自分のお祖父さんの写真の存在を知り母のところに電話をかけてきたという次第だ。

曽祖父には8人息子がいて、上から3番目の人は旧制高校を卒業後は田舎から出て大学に進んでいる。やがて教授の娘さんと結婚、婿養子に入って研究活動を続けることができた。太平洋戦争中は石油精製の研究者として南方に渡り、戦況が悪くなると米軍の捕虜となって収容所で亡くなったらしい。件の従兄はその人の帰りを待つ幼い息子だった。わずかに記憶する父親の面影が曽祖父の立ち姿に重なると、写真が届くやお礼の電話をくれたそうだ。

椰子の実 作詞:島崎藤村 作曲:大中寅二作曲 ギター:岡崎倫典

どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...