2021年9月22日水曜日

タヌキにまつわるエトセトラ

 四国出身の祖父が若い頃、まだ幼かった母と叔父を寝かしつける時、よくお話をしてくれたそうだ。話のネタに困ると故郷の民話を繰り返し、それもタヌキの話ばかりだったとか。

四国にはタヌキの話が多い。最も有名なのは阿波の「かちかち山」だが、他にも探すと人を化かす怖いのからひょうきんなのまでいっぱいいる。人に悪さをするキツネを弘法大師に頼んで追っ払ってもらったら、今度はタヌキの楽園になったという話まであるくらいだ。頼まれたお大師様もさぞお困りになったことだろう。タヌキの話が多いのは実際のところ、西日本の里山ではキツネより出くわすことが圧倒的に多いからだろう。

民話・説話は基本的に口承文学だからどれがオリジナルかはっきりとしないところはあるが、東西を問わず古いと言われている伝承ほど怖い。最近の子供向けの話は刺激的な部分はカットしてソフトな内容に書き換えられたものばかりで、やや物足りない感はあるが「かちかち山」は別だ。情けをかけたばかりにタヌキに杵で殴り殺された婆を、爺がタヌキと思って鍋にして喰ってしまう辺りはあまりに残酷で、後半で背中を火傷させようが泥舟で沈めようが初っ端の衝撃に比べれば霞んでしまう。やはり寝る前の話にはオチがあり、めでたしめでたし、で終わりたい。

讃岐に伝わるタヌキの話は祖父から聞いたのかもしれないが、実は今日調べてみるまで知らなかった。ただ「ナントカの禿狸」というのだけ記憶していて、それが以下の「浄願寺の禿狸」のようである。(屋島の太三郎狸:スタジオジブリのアニメ映画『平成狸合戦ぽんぽこ』の「太三朗禿狸」のモデル、も有名らしいがそれは知らなかった)

むかしむかし、讃岐国にタヌキがおった。貧しく年越しの用意もできない夫婦を哀れに思い、金のヤカンに化けて自分を市で売らせた。金持ちに買われたタヌキはご主人に毎日火にかけられたり磨かれて毛が抜け、たまらず逃げ出してしまう。逃げ込んだお寺で泣いていると和尚さんがお餅をくれてすっかり元気に。お寺に住み着いたタヌキはその後も良い行いをしたので幸運をもたらす大明神として祀られ、今も「禿さん」と親しまれている。

ぶんぶく茶釜にも似ている可愛らしい話でもあり、祖父がラッキーアイテムとしてタヌキグッズを集めていたのはこの話からなのだろう。信楽に行けば器と一緒に必ずタヌキの置物も買って帰り、庭に大きいのから小さいのまでたくさん並べていた。






どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...