2022年3月20日日曜日

守りたい思い

 『影武者』(監督:黒澤明 1980年 東宝)をBSで録画していたのを観る。邦画のなんともいえない間がどちらかというと苦手なのだが、ファンには失礼だが作業をしながらにはちょうど良い。この映画はさらに有名な『乱』の制作費を補うために準備作的に撮ったと言われている。出演者も当初は勝新太郎を起用するはずだったが、勝が黒澤みたいな面倒くさい監督には出演したくないと断ったので、代わりに『乱』で主役が決まっていた仲代達矢が一人二役(信玄と影武者)で出演することとなったとか。

製作総指揮としてフランシス・F・コッポラとジョージ・ルーカスが参加している割には特撮がわざとらしいしストーリーも未完成な感じがする。長篠の戦いで信長の鉄砲隊に撃たれた武田軍の死屍累々シーンも、悲惨さを表すにしてもやたら冗長に感じてしまう。ヒーローが出てきてカッコよく戦って悪玉を倒すようなチャンバラを期待しては全然面白くないだろう。

家康方の狙撃手が信玄を死に至らしめ、武田の家老たちは遺言通り3年間死を伏せて敵味方を欺く。側室の子勝頼サイドと幼い嫡孫サイドの間で派閥闘争が起こる一方で、信玄の国を守りたい切実な思いがなぜか元盗賊の影武者に乗り移る。自分の差配一つで多くの兵が死ぬことも重く受け止め、戦国武将の背負う責任の重さを知ることで意識に変化が現れる。金品を奪うことで生きてきた男が、土地や人を守るために命懸けで戦うことを望むのだ。それが良いことかどうかよりも、そうさせてしまうリーダーの存在とは何なのか考えさせられる。

2月の終わり、ロシアのウクライナ侵攻が突然始まった。それから1ヶ月、それまで想像もつかなかった悲惨な戦闘が繰り広げられている。国防について本当に考える時が来ている。



どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...