2022年10月21日金曜日

本場のクシコス・ポスト

 近所の小学校が今年は通常通り運動会を行うので、場内放送や音楽などで近隣のご理解を賜りたいとのこと。開校時でも児童数200人くらいの学校だったから、少子化が進んだ息子たちが通う頃には常に100人を下回り、運動会は午前中でほとんどのプログラムが終わってしまう。

本当は午前中で終わらせることは可能なのだが、当時はまだ全体に運動場で家族と弁当を食べるのを楽しみにしている風潮があり、少人数であるが故に場所取りも加熱せずパラソルをたてたり勝手気ままなイベントだった。昼休みが終わると全校リレーなる1年から6年生まで全員が色別対抗で走るという大取り種目があり、それもあっという間に走り終わる。

我が家は隣接する幼稚園からの続きで息子たちの運動会を9年見ることとなり、やがて流れてくる放送を聞くだけになって、あれだけは子育て期間の良かったこともそうでなかったことも思い出す風物詩だなぁと思ってきた。コロナ禍で3年ほど聞こえなかった小学校の気配がまた感じられ、今年は運動会あるんだな、とコロナ前にリセットされる様な気持ちになった。聞こえてくる音楽からして運動会もだいぶ様変わりしているだろうけれど。

昭和の運動会で欠かせないBGM「クシコスの郵便馬車」という曲は、フランツ・リストによるハンガリー民謡を取り込んだ曲の一部を、のちにヘルマン・ネッケという人が引用して作曲、Csikos Postとして出したピアノ曲なのだそうだ。明治期にこの曲を日本に持ち帰った人がクシコスとドイツ風に読み、さらにそれを地名か何かと誤解し、postがドイツ語で郵便という意味になるので直訳したら邦題がこうなってしまったらしい。吹奏楽や管弦楽に編曲され、さぞかしメジャーな曲かと思えば日本以外ではほとんど知名度がなく、1990年代ニンテンドーなど日本製ゲーム音楽として世界に知られる様になったというからちょっと驚き。

csikos postで画像検索すると19世紀のごく普通の馬車に乗った御者がムチを振るって爆走している絵がたくさん出ているが、そこまで急ぐ理由がわからない。速達なら馬一頭を走らせたほうがよほど合理的だろうに、と思って少し調べてみる。

csikós(原語にちかい発音はチコーシュ)とは馬に乗る人という意味で、csikós postはチェコ、クロアチア、セルビア系遊牧民による二頭の馬の背に立ち乗りしながら、別に三頭の馬の手綱を捌くという、曲乗りを指すとのこと。動画では立ち乗りもすごいけれど6頭の手綱を捌いていて、馬が言うことをきくのもすごい。「郵便馬車」というのはあくまでも技の名前であって、手紙を配るどころかアクロバティブショーということで、今でも運動会には必須BGM、なのでしょうか???


どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...