2024年4月27日土曜日

どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。

長く生きてもやっぱりあの世へ行くのは勇気がいるから、この世の執着を少しずつ解いていくことを自分に言い聞かせているのだそうだ。地べたの世界に絡まった紐をするすると外して、最後の一本を解き放った瞬間、まるで気球のように空に向かって飛んでいくなんて素敵な発想だなぁと思った。

同じ死ぬのでも、幼い子供を残して逝かねばならない人、故郷に恋人を残して戦場で散っていく人などはこの世への思いを無惨に断ち切られ、心配と不安の中でこの世の記憶はどうなってしまうのだろうと重たい気持ちになる。私が今この瞬間「あなたは死にます」と言われたら、手足をばたつかせて「今は困ります。どうかもう少し猶予をください。」と未練たらたら懇願するだろう。

平和なうちに歳をとり、生まれた順番に逝くことの有り難さ、爽やかさを年寄りから学ぶ良い機会となった。お母さん、ありがとね。

ぼくの好きなおじさん

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