2020年11月18日水曜日

色のない世界から

図らずもふたりの息子を授かり、乳児から幼児、児童になるにしたがって戸惑うこともいろいろあったが、男の子というもののへ偏見を少しずつ修正させながら一緒に歩んできた。家庭に子供がいると自然と絵本や児童書に手が伸びて、自分も含めてそれぞれの性格や個性、嗜好を考える機会を得ることができる。またそうした環境を与えてくれた人たちに心から感謝したい。

児童書でも中高生向けに書かれた小説に『カラフル』(森 絵都 1998)がある。以前、野苺のことで『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)を挙げたが、こちらが女子向けとすると『カラフル』は男子に寄り添った内容になる。

【内容情報】生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。(「BOOK」データベースより)

家庭不和、不倫、援助交際、いじめ、自殺とシビアな現実に、今どきの高校生の一種の軽さが共感を呼ぶのか現在59刷22万部のロングセラーで文庫は初版で12万部というからすごい。読み手はだんだん分かってくるのだが、主人公のぼくは自らが自殺した真の魂であることに気付く。自分で自分を殺した罪に気付き、色のない世界から美醜明暗様々な色でひしめく世界へ踏み出していく。

若い人にはどうしても少し前の流行が古臭く感じられるだろうから、こんな不穏な世の中にまたこうした作品が新しく生まれてきて欲しいと思う。

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どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...