2023年10月29日日曜日

「弾き」継がれる昭和歌謡曲

バンドでも目立つのはボーカルで、ライブではギターを下げていてもちょっとコードを鳴らすぐらいしかしていないものだ。まともに楽器を弾こうと思えば歌がおろそかになり、逆にちゃんと歌おうと思えば楽器演奏が控えめになるのは当たり前の話だろう。だからプロの楽器奏者はどうしても一人では地味な存在になる。

そんな中、大阪出身のウクレレ奏者の鈴木智貴さんは、レッスン動画はもちろん教本の出版・ライブ演奏でもメジャーになりつつある注目の人。音大でギターを学びウクレレに転向、ちょっと昔の曲のカバーアレンジも得意で歌うように演奏する。マイケルジャクソンメドレーが実に格好良く、音楽の詳しいことは分からないけれど本家のギターアレンジがのちに発表のオリジナル曲に一部オマージュされているように感じた。

その鈴木智貴さんが毎週のように挙げている演奏動画の最新は小林明子「恋に落ちて-Fall in love」。鈴木さんは30代の既婚男性でありながら「推し」の方々には王子と慕われるくらい可愛らしい容姿で、アロハ短パン姿でパイナップルジュースしか飲まない印象だけに、昭和歌謡曲はあまり似合わない。なのにあの時代のメロディーラインがとても魅力的に響くのだそうで、当時流行ったドラマなんて全然知らないから、先入観なしに素直に楽しめるのだろう。

さてこの「恋におちて」はTBS系ドラマ『金曜日の妻たちへⅢ』の主題歌で、1985年から足かけ2年ミリオンをマークしたという大変なヒット曲だ。当時クソ真面目で多感な中学生の私はドラマの内容を伝え聞くに、十把一絡げに不潔な印象を植え付けられた。いまだこの歌を聴くと酒タバコに口紅香水でジメジメと汚れたじゅうたんに座り込み、おっさんの本宅を想像しながら黒電話をさすっている化粧の崩れた中年女が出てくる有様だ。歌い出しのおさえた感じ、サビの部分の盛り上がりにしてもなかなか名曲なのだけど、湯川れいこの強烈な歌詞が全部さらっていってしまうのが残念といえば残念だ。



どうせ死ぬんだから

 「どうせもうすぐ死ぬんだから」と老人特有の僻みっぽいことを口にしながら、「年寄りは嫌よねぇ。若い頃はお爺さんやお婆さんがなんでそんなこと言うんだろうってずっと思ってたわ」と母は自分で言って笑っている。続けて「それはね」となかなかに深い話をしてくれた。 長く生きてもやっぱりあの世...